この作品の真髄は、静謐な映像美と刺すような鋭い感情が同居する危ういバランスにあります。ピアノの旋律が空間を支配するなか、言葉にできない痛みが溢れ出し、観る者の心拍数にまで干渉してくるかのようです。抑制された演出が、芸術が救済であると同時に刃にもなり得るという矛盾を鮮烈に突きつけてきます。
ヘイリー・スワートアウトを筆頭とした、脆さと強さを秘めたキャスト陣の演技は圧巻です。本作は理不尽な現実をハサミで切り取り、自らの手で再構築しようとする魂の咆哮であり、観終えた後もその冷徹でいて温かい余韻から逃れることはできないでしょう。