あらすじ
剣こそ男の生きる道と信じる山崎烝は、恋人である志満の反対を振り切って、壬生の新選組に入った。だが局長の芹沢鴨は粗暴で、烝が尊敬する近藤勇の苦言は一向に聞き入れられなかった。土方歳三は芹沢の腹心を切腹に追い込み、さらに泥酔した芹沢をも斬殺。烝は土方のやり方に反発、黙認する近藤も詰った。ある夜、誤って公儀役人を斬ってしまった烝は、近藤に命じられ勤王浪士たちの動向を見張る探偵方になり、池田屋に集まる浪士たちを発見する。
作品考察・見どころ
本作は、煌びやかなヒーロー像としての新選組を徹底的に解体し、血生臭い組織の非情さと個人の孤独を浮き彫りにした傑作です。三隅研次監督による計算し尽くされた光と影の演出は、死の予感に満ちた時代の閉塞感を鮮烈に描き出し、観る者の胸に刃を突き立てるような凄まじい緊張感を全編にわたって持続させています。
市川雷蔵の静謐な佇まいに宿る狂気と、若山富三郎が放つ圧倒的な熱量の対比は見事と言うほかありません。子母澤寛の原作が持つ「歴史の裏側を穿つ視点」を、映画という媒体特有の残酷なまでの美学へと昇華させた本作。組織という魔物に呑み込まれていく人間の悲哀をこれほど冷徹かつ情熱的に捉えた作品は他に類を見ません。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。