光石研という稀代の名優が、情けないほど不器用で、しかし愛さずにはいられない中年男性の悲哀と矜持を全身で体現しています。見栄を張り、空回りしながらも「格好良くありたい」と足掻く姿は、滑稽でありながらも不思議な気高さに満ちており、観る者の胸に痛烈な共感と愛おしさを呼び起こします。
安藤桃子監督の冷徹かつ温かな眼差しは、何気ない日常の風景を、魂の震えるドラマへと変貌させました。言葉にできない親子の距離感や、沈黙の中に漂う愛情の機微を深く掬い取った演出は見事と言うほかありません。不恰好なまま懸命に生きるすべての人への讃歌であり、観終えた後には「人生は案外悪くない」と思わせてくれる、至高の人間ドラマです。