フィンランドの冷徹な空気感が画面越しに伝わる本作は、静寂そのものが刃物のように神経を逆なでする究極の心理スリラーです。緻密に計算された陰影の演出は、目に見える恐怖以上に、観る者の想像力を内側から侵食していく底知れぬ危うさを秘めています。
主演のソリ・ラッバートが見せる、慈愛と狂気が紙一重で同居するような凄まじい演技は圧巻の一言に尽きます。閉鎖的な空間で剥き出しになる人間の本性、そして夜という時間が内包する深淵な闇を、映像ならではの緊張感で見事に描き切った、映画史の片隅に輝く剥き出しの宝石といえる一作です。