マーチャント・アイヴォリーという伝説を支えたイスマイル・マーチャント。本作の真髄は、プロデューサーという枠を超え、映画を「生きる術」とした男の情熱にあります。盟友ジェームズ・アイヴォリー、ルース・プラワー・ジャブヴァーラとの類稀な絆が、いかにして優雅で高潔な映像美を紡ぎ出したのか。その舞台裏に流れる揺るぎない美学と、三者の魂の共鳴は、観る者の創造性を激しく刺激します。
作品が放つメッセージは、芸術とは緻密な計算と無垢な愛の融合であるという真理です。交渉人であり美食家でもあった彼の多才な人となりが、作品に血肉を与えていく過程は圧巻の一言。洗練された映像の裏側に潜む泥臭いまでの執念を知ることで、私たちが愛した名作群は、より一層の輝きと深みを増して心に刻まれるでしょう。