巨匠・溝口健二が、浮世絵師・歌麿を通して表現者の業を鮮烈に描いた傑作です。画面の隅々まで研ぎ澄まされた美意識が、江戸の浮世を現代の鏡として蘇らせます。美に憑りつかれた男が、女性たちの激しい情念と共鳴し、芸術へと昇華させるプロセスには、魂を震わせる圧倒的な熱量が宿っています。
坂東三津五郎の芸術家としての凄みと、田中絹代が体現する凄絶な生命力。この競演は、創作という行為が持つ残酷さと崇高さを浮き彫りにします。戦後間もない時期に放たれた自由への渇望と、芸術への凄烈なまでの盲信は、時代を超えて私たちの感性を激しく揺さぶり続けます。