この作品の真髄は、正義という美名の下に潜む狂気と、現代社会の歪みを痛烈に風刺した鋭さにあります。主人公が振りかざす独りよがりの道徳観は滑稽ながらも、規律の境界はどこにあるのかという問いを観る者に突きつけます。極端な潔癖さが生む予測不能な緊張感は、コメディの枠を軽々と超え、社会の閉塞感を見事にえぐり出しています。
主演のヤン・ヘンリック・スタールベルクによる怪演は、観客の神経を逆なでする危うさと悲哀を完璧に体現しています。ドキュメンタリータッチの演出がこの歪んだ英雄譚に不気味なリアリティを与え、日常の風景を一変させます。鑑賞後、身近な世界が少しだけ恐ろしく、そして滑稽に見えてくる。そんな強烈な爪痕を残す唯一無二の刺激作です。