本作の最大の魅力は、主演アニエス・ジャウィの圧倒的な演技力が描き出す、人間の滑稽さと愛おしさの共存にあります。揺れ動く感情の機微を、決して悲劇に浸らせることなく、絶妙なユーモアで包み込む演出が秀逸です。自己を見失いかけながらも、不器用にもがき続ける主人公の姿は、観る者の心の奥底にある孤独と共鳴し、最後には深い肯定感を与えてくれます。
また、予測不能なリズムで展開するエピソードの数々は、人生そのものの不条理さを軽やかに笑い飛ばす力に満ちています。フィリップ・カトリーヌらの個性が彩りを添え、映像ならではの自由な視点から「自分として生きること」の困難さと美しさを鮮烈に浮き彫りにしています。最期まで自分を諦めない、魂の叫びとも言える温かな眼差しが胸を打つ傑作です。