グラフトン・フィルムズ(Grafton Films)は、1930年代から40年代にかけての英国映画黄金期において、質の高い文芸作品や重厚な人間ドラマを世に送り出した独立系制作会社です。プロデューサーのイザドア・ゴールドスミスを中心に、当時のイギリス社会を鋭く切り取ったリアリズム溢れる作品群で高く評価されました。同社の最大の功績は、A・J・クローニンの小説を映画化した『星は眺めている(The Stars Look Down)』や『帽子屋の城(Hatter's Castle)』など、文学的価値の高い物語を格調高い映像美で昇華させた点にあります。特に名匠キャロル・リード監督による『星は眺めている』は、炭鉱町の過酷な現実を描き、英国映画史に残る傑作として今日まで語り継がれています。大規模なスタジオシステムとは一線を画し、作家性や物語の深みを重視した制作姿勢は、単なる娯楽に留まらない、社会派ドラマの先駆けとしての地位を確立しました。戦前・戦中の英国映画界において、独自の審美眼と確かな制作力で確固たる存在感を示した名門プロダクションです。