シネマトグラフィカ・カルデロンは、メキシコ映画の黄金時代を牽引し、数十年にわたり同国の娯楽映画界を支配した伝説的な独立系製作会社です。カルデロン兄弟によって設立された同社は、大衆の欲望を的確に捉える卓越したビジネスセンスを誇り、1940年代から50年代にかけては「シネ・デ・ルンベラス(ルンバ映画)」という独自のジャンルを確立。ニノン・セビージャ等のスターを擁し、官能的なダンスとメロドラマを融合させた作品群で一世を風靡しました。その後、ルチャリブレ(メキシコ・プロレス)の英雄を起用したアクション映画や、怪奇ホラー、さらにはカルト的人気を誇る『女バットマン(La mujer murciélago)』といった特殊なジャンル映画においても、その才覚を遺憾なく発揮しました。商業主義を徹底しながらも、時にアバンギャルドな表現を取り入れる柔軟な製作姿勢は、同社を単なる製作会社以上の「メキシコ大衆文化の象徴」へと押し上げました。現在もそのライブラリは、ラテンアメリカ映画史を語る上で欠かせない貴重な資産として、世界中のシネフィルから高く評価されています。