本作の真髄は、メタ構造というギミックを単なる遊びに留めず、存在そのものを懸けた存亡の危機へと昇華させた点にあります。主人公が自己の虚構性を自覚しつつ、打ち切りという世界の終焉に抗う姿は、創作者の情熱と苦悩を体現した鮮烈な隠喩と言えるでしょう。阿久井真の描く力強い筆致が、虚構と現実の境界を溶かし、読者を物語の当事者へと引きずり込む圧倒的な熱量を持っています。
運命を規定するメタ・ナラティブの残酷さと、そこから脱却しようとする意志の衝突こそが最大の読みどころです。記号的な主人公であることを拒み、真のヒーローへと脱皮しようとする葛藤は、予定調和な物語を破壊する爆発力を秘めています。創作という営みが持つ神性さと暴力性を同時に突きつける、漫画という表現への愛に満ちた渾身の一冊です。