本作の白眉は、組織が巨大化する中で浮き彫りになる個の矜持と忠誠の美学にあります。ディアブロによる原初たちへの勧誘劇は、単なる戦力増強の記録ではなく、悠久の時を生きる絶対者たちがリムルという特異点に惹かれていく魂の変遷を描いています。知略と武力が交錯する高度な政治劇としての側面が、物語に重厚な文学的品位を与えているのです。
特装版に収録された劇場版前日譚は、映像作品が持つ動的なカタルシスを、フルカラー漫画という贅沢な手法で翻訳し直した至高の試みです。映画で描かれた絆の萌芽が、紙幅の上でより繊細な心理描写とともに補完されることで、メディアの垣根を超えた多層的な感動が押し寄せます。色彩とテキストが共鳴し、作品世界が鮮烈な立体感を伴って読者の心に迫ってくるでしょう。